○ 「高野山町石道(No1)」見聞録 

1.九度山〜根本大塔
 2004.10.13 07:05〜15:25 晴れ時々曇り

夏の間、「青春18きっぷ」を使って「伊勢路」踏破を行っていた。前回、当初の予定「高野山町石道」 を変更して「女人堂里石」「六地蔵」を見極めるため、学文路から「高野街道」で高野山に上った。
台風・秋雨前線の影響で不順な天候が続いていたが、やっと秋の気配が感じられるようになった。 「高野山町石道」は秋が良い、柿の季節・紅葉の季節がお薦めとの先達の言葉に延ばしていた紀行を 実施することにする。

前回の歩行時ゲットした橋本駅観光案内所の「高野山町石道」ガイドマップと先達のサイトを 参考に初秋の高野山を楽しもう。
前回と同じく5時過ぎの電車で出発する。大阪・新今宮で乗り換え、ガラガラの南海電車でウトウト しながら九度山駅に7時05分到着。
九度山は小さい頃「真田十勇士」の講談で真田幸村・猿飛佐助・霧隠才蔵等の話で出て来ており 「くどさん」と思っていたが「くどやま」が正確だと知った。

駅から橋を渡り県道を進むと「真田庵」の矢印があり、細い道の先に落着いた建物が建っている。 大坂冬の陣で活躍した真田幸村の「六文銭」の旗印が門にも飾られ、信州・上田城址に行った時の ことを思い出しながら、静かな神社に参拝する。

九度山駅

真田庵 説明→

真田神社 説明→


世界遺産登録の旗に導かれながら、歴史街道の標識と共に進むと「慈尊院」に到着する。まだ早いので 参拝者は無くひっそりとしている。
「慈尊院」は高野山が年貢の徴収や外部との交渉の寺務所として 山麓の高野政所ともいわれ、弘法大師が母親の没後、伽藍を建て、弥勒菩薩を安置したため、女人 禁制の高野に対し、女人高野とも呼ばれ女性の参拝客で賑わうとのこと。

本堂で朱印帳に記帳してもらい、今回の歩行の安全を祈願する。納められている絵馬は安産のお願いが 多く、乳房型の絵馬もあり、女人高野と呼ばれることがよく分かる。

慈尊院・山門

慈尊院・多宝塔

慈尊院・本堂 絵馬→


「慈尊院」の境内から長い階段が「丹生官省符(にゅうかんじょうぶ)神社」に通じている。この 階段の真ん中に「高野山町石道」のスタートとなる「180町石」が堂々と立っている。

「町石」は「慈尊院」から高野山の「大門」への道筋に一町(約109m)ごとに高さ3mを超す 五輪塔形の石柱が連綿と続く。当初は木製の卒塔婆であったが、鎌倉時代に石造りに建て替えられ その数180基。その内150基は鎌倉時代に創建されたもの。
「町石」は空海の生地讃岐産の高さ3m30cm角の花崗岩で、山上の「根本大塔」を基点にし、「慈尊院」 の石段途中を最後に180町石を建て、胎蔵界180尊にあて、さらに「大塔」から「奥の院」までの 36町石を設け、金剛界37尊としたとのこと。

階段の下から見上げると右側の中段付近に一本の石柱が立っているのが見える。あれが「高野山町石道」の 「180町石」と急いで上る。見上げる高さで胎蔵界180尊をかたどった仏種子を表わす梵字、180町の町数、 施主名、年号が刻まれている。以降の「町石」も同じ様に創設されている。
赤い大きな鳥居をくぐり、「丹生官省符神社」の本殿に参拝し、少し暑くなって来たのでベストを 脱ぎ、いよいよ「大門」に向けて出発。(7:50)

丹生官省符神社・石段と180町石

180町石 説明→

丹生官省符神社・本殿 説明→


コンクリートの農道を進むとすぐに「179町石」があり、109m毎にあれば迷うことはないと安心して 進む。右側に「勝利寺」の高い階段が見えるがパスして進み、木々のトンネルをくぐると柿が鈴なり なっている柿林の中に「178町石」が迎えてくれる。
柿林を縫って歩くと「172町石」が竹林の中に立ち趣を添える。やがて「170町石」に至り、スタート から1km以上歩いたことが分かる。「町石」とは別に「町石道の道しるべ」も設置されており、快適に 歩を進める。

勝利寺・石段

178町石

172町石


柿林の「町石」を巡りながら進むと視界が開け「紀ノ川」の流れが薄曇りの空に展望出来るように なり、高く上って来たことが分かる。「166町石」から少し離れた所に休憩所があるので一息入れる。 汗を拭い、お茶を飲み、長袖のシャツを脱いでTシャツ一枚になる。少し曇っているが展望はgood。 (8:32)

柿色に染まった富有柿の農道を上る。展望と柿が気持ち良く歩を進ませてくれる。「162町石」は柿林 の中に半分埋まって立っており、柿林の一部にみかんも植わっている。道の脇に「無人販売所」が あり、柿が4個で100円。小振りのみかんも10個程入っている。柿2袋、みかん1袋を買い、みかんを 食べると甘い。みかんを食べながら一息入れる。柿とみかんでリュックが重くなる。

紀ノ川の展望

162町石

無人販売所


「163町石」を見ながらのショットは「町石道」の代表的な構図だが、曇っていて展望が利かないのは 残念だ。柿林の中の「160町石」を過ぎるとコンクリートの道が地道に変わり足の負担が軽くなる。 緑に溢れた道を進むと新旧の「154町石」が見られる。古い方の頭は崩れている。
杉木立の道を進むと「150町石」に出会い、真っ直ぐな木立の道に「お地蔵さん」がひっそりと迎えて くれる。時々山鳥の声を聞きながら平坦な道を進むと「144町石」と「一里石」が並んで立っている。 スタートから4km進んだのだ。(9:23)

163町石の展望

地道の町石道

新旧の154町石


杉木立の道

お地蔵さん

144町石と一里石



「一里石」を過ぎて一段落したが「町石道」はまだまだ続く。「144町石」だからまだ20%しか 歩いていないのだ。なだらかな道を進むと「140町石」に至る。(9:32)
少し曇って来て風が強くなって来た。半袖から出ている腕が冷たく感じる。木立の道は「六本杉」の 分岐点に到着する。「六本杉」の名称は古くからあるらしいが、六本の杉があったのではなく、 大杉の見事な並木があったとか。ここで一息入れるが風が冷たく肌寒い感じだ。(9:42)
ここから「丹生都比売(にゅうつひめ)神社」に通じる道となるが、寄り道はせず「町石道」を進む。 木立に囲まれた気持ちの良い道だが、先日の台風・秋雨の影響かぬかるみ道が多く、足下に注意して 進むと「130町石」に到着。(10:00)

六本杉

木立の町石道

130町石


少しぬかるんだ小道を淡々と進む。進行方向から人声がし、消防署関係と思われるグループと挨拶を 交わし、上古沢駅に通じる「古峠」の「124町石」に到着。ショートコースはここから上古沢駅に 行くが、山頂まで目指すのでそのまま進む。
やがて東屋の休憩所があり、横に高さ5.6mの「二ツ鳥居」が堂々と立っている。山の中に見事だ。 休憩所で一息入れ、みかんを食べる。(10:30)

ハイカーと出会う

古峠と124町石

二ツ鳥居 説明→


この辺りから日が射して来たので木漏れ日がきれいだ。日が照って来ても風が心地良く夏の様に汗を かくことがないのは助かる。秋の訪れを実感。木漏れ日の小道を進むと木製の鳥居が立つ 白蛇が住むと云われる「白蛇の岩」が祀られている。
少し下り道になりゴルフ場と「応其池」の横を通り、明るい日差しを受けた「神田地蔵堂」と 稲刈りの終わった「神田の里」ののどかな光景が現れる。山から里に、気持ち良い。しばし風景に 見惚れる。再び林に入り「110町石」を過ぎ、「108町石」を過ぎた所に「二里石」が木立の中に ひっそりと立っている。8km踏破。(10:58)

木漏れ日の道

白蛇の岩

ゴルフ場と応其池


神田地蔵堂

神田の里

二里石


日を浴びた緑の小道を進む。「100町石」を過ぎ、丁度中間になる「90町石」に至る。(11:26)
やっと半分来たのだ。予定より遅れているが、快適な「町石道」を楽しみながら歩けば良いと 納得させる。
木々に囲まれた小道を進み「80町石」を過ぎる。快調に「町石道」を楽しみながら歩行を続けると 「三里石」と「72町石」が並んで立っている。12km歩いた。(12:02)

緑の道

90町石

三里石と72町石


小さくアップダウンがあるが、平坦な木漏れ日の道を気持ち良く進む。道が細くなった所もあり 趣十分だ。所々、林の切れた所から展望が開け高野の山々が望まれる。
「63町石」の横に欠けた「町石」が見られ、修復が施されていることが分かる。自動車の音が聞こえ 始めた道端で、チェーンソーを置いて作業の方達が昼食を食べて居られる。ご苦労様と挨拶をして 進むと岩肌に小さな「見守り地蔵」が優しく微笑んでいる。昔から巡礼の安全を願っていてくれた のだろう。坂を下ると国道にぶつかる。矢立の里だ。
国道横に茶店があるので昼食にしようと立ち寄るが、食事はなく焼餅だけ売っているので、2個 お願いして一服する。疲れた体に焼餅の香ばしさと甘さは・・・。店の方と話す。平日は変わらないが 世界遺産登録後、休日の人出は多くなったとのこと。お茶をいただき、お土産に焼餅を買って 出発する。(12:30)

木漏れ日の小道

63町石と欠けた町石

見守り地蔵



茶店での休憩で一息付いて、後1/3と気を締めて、急な坂を上り始める。すぐに「59町石」と横に 「六地蔵」が祀られている。上から若いカップルが下りて来て、挨拶をし進む。
「55町石」の近くに「袈裟掛石」が道脇に鎮座している。弘法大師が御袈裟を掛けられたと云われ、 この石から高野山の清浄結界となるそうだ。この石の隙間をくぐると長生きするそうだが、狭いので 諦める。
古い「道しるべ」を見て、進むと「押上石」がある。説明には弘法大師の手型があるとのことだが、 分からなかった。

59町石と六地蔵

袈裟掛石 説明→

押上石 説明→


この辺りは上り道だがなだらかなので少し汗ばむ程度で進める。視界が開け山々の展望で一息入れ、 「50町石」に到着。(13:00)
木陰の気持ち良い小道を進むと木が朽ちて崩れた跡が近くにある「46町石」を通り、なぜか二基 立っている「44町石」を眺める。
しばらく歩くと国道が近付いたのか車の音が聞こえ、国道に下りる。国道には「道しるべ」で 「町石道」を表示し、国道脇の藪に「40町石」が立ち、以降「39・38・37町石」は国道にあるそう なので、国道を避けて「道しるべ」通り小道を上ると東屋の休憩所に到着する。(13:20)
ここでコンビニで買ったおにぎりの昼食にする。みかんも食べて一休みし、出発。(13:35)

50町石

二基の44町石

40町石


小道を下ると再び国道に出会い、国道脇に「37町石」が立ち、笹の小道を下る。若いハイカーが 追いついて来て、話しながら進む。国道の下の笹の中に「36町石」があり、次に「四里石」が 笹の中に隠れたように立っている。16km通過。

37町石

笹の小道

四里石


若いハイカーは先に進み、年配のハイカーと出会い「大門」まで話しながら歩く。高野下の方で 地元だがはじめての歩行だそうだ。笹の小道は気持ち良い。
「20町石」を過ぎて、笹や木々の小道を快調に歩く。「鏡石」は話していて見落とした。「大門」の 手前から上り坂が急になり「10町石」と後10町だ。

20町石

笹と木々の道

10町石


急な坂をフーフー云いながら上り切ると真っ赤な大きな「大門」が迎えてくれる。「慈尊院」からの 「町石道」を上り切った満足感で一杯だ。ベンチで汗を拭い、お茶を飲み一息入れる。(14:50)
「大門」全体を写そうとすると随分下がって写さねばならない。「仁王」さんの姿にしばし見惚れる。 外人の観光客も興味深く見ておられた。

左・仁王像

大門 説明→

右・仁王像


「大門」の手前にある「8町石」「7町石」を探し、「大門」をくぐる。「大門」を越えた境内に 「6町石」が立っている。ここから「根本大塔」に向かう道筋に順次「5・4・3町石」が109m進まない 内に立っている。道筋は閑散として人通りもほとんどない。 「根本大塔」の境内の柵の中に「2町石」が見つかり、少し行くとやはり柵の中の杉林に最終ゴールの 「慈尊院側・1町石」が見易い文字で堂々と立っている。やっと「180町石」から「1町石」までの 行程を踏破した。肌寒さを感じるが体は満足感で一杯だ。「本宮大社」に到達した時に味わった 感覚が戻ったようだ。(15:30)

「根本大塔」の境内に入り、寺務所で朱印帳に記帳してもらい参拝する。「根本大塔」は真言密教の 根本道場として創設され、高野山全体の中心となす壇上伽藍で48.5mの高さである。大きい。 「根本大塔」の境内を進むと「奥の院」までの「36町石」のスタートとなる「奥の院側・1町石」が 立っている。次回はここから「奥の院町石」を辿って進む予定だ。ここがスタートだと確認する。

8町石

6町石

4町石


慈尊院側・1町石

根本大塔 説明→

奥の院側・1町石


道路に戻り、道なりに「金剛峰寺」方向に歩く。肌寒くなって来たのでバス停のベンチで長袖を 取り出し着る。電光の温度計は14.8度と表示されている。下界よりは10度低いのは明らかだ。 前回買った自販機でビールを買って、「高野山町石道」踏破を乾杯する。夏のようにビールが余り 美味しくない。汗とビールは相関関係にあるようだ。
バスでケーブル駅に行き少し待って下山する。前回上った「不動坂」を見下ろしながら急行に 乗り換える。温泉に立ち寄ろうかと考えたが、薄暗くなって来たのでウトウトとしながら新今宮で 乗り換え大阪へ。大阪駅でビールと焼酎で湯豆腐をつまみに乾杯。今日の歩行は42000歩だが、 暑さが厳しくないので疲れは少ない。

柿の季節に「高野山町石道」を歩くのはgoodとの情報で実行に移した。好きな武将の一人である 真田三代の幸村の「真田庵」も訪ね、「女人高野・慈尊院」からの「180町石道」は絶好のハイキング コースでもあり、農道沿いの柿林を楽しみ、無人販売所で美味しい柿とみかんをゲットし、地道に なると自然が豊かで気持ち良い。「中辺路」の山の中のような厳しさはないが、自然を十分味わう ことが出来る素敵な「町石道」だ。

小生、全ての「町石」の撮影は出来ていないので、全ての「町石」をご覧になりたい方は、小生が いつも参考にさせていただいている 「tatubouの熊野詣の道・高野山町石道」を参照して堪能して下さい。

高野山への「高野街道」「町石道」を踏破して、山頂の「女人堂」「大門」「根本大塔」「金剛峰寺」 まで歩くことが出来た。ここから「奥の院」への参拝道に立つ「36町石」を訪ねて「弘法大師御廟」 までのルートで全ての「町石」を極めたい。
「熊野本宮大社」へはここから「小辺路」の山の中を進むのだが、まだ踏破する自信がない。 来春にでもじっくり検討して実施したいが・・・。 高野山までのルートを踏破したことに感謝して次に続けたい。







    
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