○ 「大峯奥駈道No2」見聞録 

2.青根ケ峰〜五番関
 2006.07.04 9:05〜16:50 晴れ

「吉野道」を完全踏破し、「大峯奥駈道」の第一歩を印してから1ケ月過ぎた。梅雨入りと共に 週間予報は曇り・雨ばかりでなかなか機会が訪れなかった。ところが、明日の予報を見ると久し振りに 太陽のマークがあるではないか。
計画はサイト上の登山グループの記録を調べていたので、即実行することにした。

今朝はワールドカップもないので心置きなく出発出来る。前夜に準備を整えるが、今回は水の補給が 出来ないようなので、2Lの水のペットボトルやおやつ類もリュックに詰める。
前回と同じく、5時過ぎに家を出て、大阪乗換で天王寺に。6時34分発の近鉄・吉野行急行に乗る。 駅で弁当とお茶・ポカリスエットを購入し、がら空きの電車で吉野へ。先日降りた六田駅を通り過ぎ、 吉野駅到着が7時58分。乗客は2人だけだ。

ケーブル乗り場に行く。ケーブルとあるが、ロープウェーで先程の女性と2人だ。料金(350円)を支払い、 8時10分発のロープウェーで出発する。 昨日はすごい雨だったそうだが、今日は大丈夫だろうと話しながら5分位の空中を楽しむ。

近鉄・吉野駅

ロープウェー駅

ロープウェー


ケーブルの山上駅は先日歩いた時に前を通っていたが、バス乗り場に気付かなかったので、バス停を確認し 料金(500円)を払ってブラブラと時間を潰す。やがてマイクロバスが到着し、小生一人だけで8時40分発で 出発する。
前回歩いた「黒門」「銅の鳥居」を通り、壮大な「蔵王堂」の横を過ぎる。「吉水神社」の辺りから 歩いた道とは違うクネクネとした道を上って行く。
運転手さんと話しながら20分程で、歩いて来た道と合流する「奥千本」バス停に到着する。運転手の 気を付けての言葉に送られて前回歩いた道を進む。
すぐ「金峯神社」の鳥居をくぐり、参道を上って行く。立派な「大峯奥駈道・案内板」が立ち、今回の ルートを確認する。標高差が結構あるので気を引き締める。
「No73.金峯神社(金精大明神)」の本殿に今回の紀行の無事を願って参拝する。「義経隠れ塔」へは 行かずに右横の道を進み始める。(9:12)

マイクロバス.. 時刻表→

案内板.. 標高差→

金峯神社


杉並木の道を上ると道しるべがあり、左の山上ケ岳方面に向かう。昨日の雨で道の真ん中は小川に なったと思われるぬかるみを上り切ると「宝塔院跡」の広場と東屋が迎えてくれる。
前回はここから「西行庵」に向かったことを思い出しながら、本格的な山道を進む。曇り空から時々 薄日が射して木漏れ日が美しい。
この辺りに「No70.愛染宿」があるはずたが、今回も分からなかった。杉木立を進むと昭和45年までは ここから「女人禁制」だった「旧女人結界碑」と石仏が立ち、左の階段を上ると「青根ケ峰(858m)」 に至る。(9:25)

宝塔院跡

杉木立の道

旧女人結界碑.. 石仏→


前回は青根ケ峰の頂上を極めたが、見晴らしも良くないので先の行程も考え、体力温存のため右の 道を進む。視界が開け大峯山系の山々が望まれるが、山の形で名前を判断できるだけの力はないが、 あの山々に向かうのだと気を締める。
ウグイスの鳴き声を楽しみながら、やがて林道に出る手前で青根ケ峰の頂上からの道と合流する。 前回はここから左に進み「蜻蛉の滝」に向かったのだ。いよいよ始めての本格的な「大峯奥駈道」 に突入だ。
林道を少し進むと右側に古道への道しるべが立てられている。横にイラストマップの掲示板があり、 これからの標高差を頭に入れる。
暑くなって来たので上着を脱ぎ、Tシャツになり、山道を進む。 小さな手製の道しるべも置かれて迷うことなく少し窪んだ緑溢れる小道や杉木立の明るい道をを快適に 上って行く。(9:35)

大峯山系の山々

林道から古道へ.. イラスト→

緑の山道


再び林道に出て、立派な舗装道路を進むと「黒滝村」の標識が立つ。やがて正面に道しるべがたくさん 立つ崖のような所と出会う。黒滝村村役場等への分岐点だ。(9:53)
しばらく林道を進むと左に「四寸岩山(しすんいわやま)」登山口の道しるべが立つ。頂上まで65分の メモ書きがあり、いよいよ本番突入だ。(10:00)

林道の黒滝村標識

道しるべ群

四寸岩山の登山口


上り坂が始まり、呼吸を整えながら一歩一歩登って行く。坂は段々と急になり、額から汗が滲んでくる。 足場は悪くはないが、今までの平坦な道に比べると厳しい。やがて、運搬用のモノレールの線路に出会い レールに沿って登ると「心身茶屋跡」に到達する。表示板が真ん中から折れていたが、大丈夫だろう。 リュックを下ろし、お茶とクッキーで一息入れる。
ガイドマップの標準時間では奥千本からここまで1時間40分だが、1時間10分程度だったのでOKと。 (10:10-15)

急な登り坂

モノレールの線路

心身茶屋跡


急坂もなだらかになり、新緑の小道を軽快に歩くことが出来る。杉木立も良いがやはり照葉樹の 新緑は気持良い。急な坂道となだらかな道を繰り返し登って行く。
緑溢れる小さい広場があったが標識はなく、「守屋茶屋跡(?)」と思われる。草木には弱いので花の 名前は分からないが、小さな花が咲き誇っている。
緩急と新緑の林と杉木立を繰り返して登って行くと涼しくなり、少しガスがかかって来た頃に 「新茶屋跡分岐点」に到着する。(11:00)

新緑の古道

杉木立の道

新茶屋跡分岐点


最後の急な坂を登り切ると「四寸岩山(1236m)」頂上に到着した。
まずは第一の難関を突破した。見晴らしは西側しか開けていないが、曇り空で山々のシルエットが見られる。 晴れていれば素晴らしい展望だろうが・・・残念だ。
頂上で休憩を兼ねて早めの昼食にする。弁当の1/3だけ食べてバテを防ごうと。風が涼しく心地良い。 やはり1000mを越えると温度も下がるのだ。一息入れて次のステップに進む。(11:10-20)

杉木立の登り坂

四寸岩山からの展望

四寸岩山(1236m)頂上



次の目的地「二蔵宿」に向かって下り始める。途中に視界の開ける所から大峯山系の展望を楽しみ ながら。
笹が生い茂る細い道は気持良い。先程までの登り坂の苦しさを忘れさせる爽快さだ。
「新茶屋跡」からの合流地点を過ぎると「足摺茶屋跡」の標識があり、木漏れ日の後光が差し込む 石塔が立ち、その後ろには行者が見守っている。
すぐ横に「足摺小屋」が建ち、真ん中が「奥駈道」が通っており、内部には祭壇が祀られている。 (11:40)

笹が生い茂る細い道

足摺茶屋跡.. 石塔→ 行者像→

足摺小屋.. 内部→


小屋の中の道を通り下り道は続くが、岩が多くむき出した様相が一変する古道となる。まだ坂は緩いが 所々きつい下りが入り混じる。距離はあるが、新緑の道、杉木立の薄暗い道を快調に歩む。

チリリン・チリリンと鈴の音がするので進行方向を見ると行者さんが歩いて来られる。立ち止まり、目礼をし どう云って良いか分からないので「ご苦労様」と話すと立ち止まって片手で合掌され、黙って進まれた。 反対の手には金剛杖を持ち、何処から歩いて来られたのか分からないが、眼光鋭く、髭がボウボウと 修験道を歩んで来られた厳しさを感じることが出来た。
そのような修験者と同じ道を歩んでいるのだと感慨深く思いながら歩を進める。
やがてもう一度林道に降りる。少し歩くと案内板があり、これからの標高差を再確認する。 再び古道に入るが、ここは「百丁口」で「九十丁」の石碑も 立っている。これからの登り坂に備えて一息入れ水を補給する。(12:10)

岩の道

修験者

百丁口.. 案内板→


緩やかな登り坂を緑の林を楽しみながら進む。照葉樹の明るい古道は段々と勾配が強くなるが、まだ 少し汗ばむ程度だ。
再び修験者と出会う。鈴の音がなかったので少し驚いたが、先程と同じく目礼をし道を空ける。2人も 修験行者とお会い出来、「奥駈道」を実感する。
やがて黒い小屋が見えてくる。手前に「百丁石」が立ち、「No69.二蔵宿の靡」に到着する。 小屋の中はきれいに整頓され祭壇が祀られている。避難時には使用しても良いが修験行者優先の説明書 が掲示されている。
小屋の前の広場には「靡」の印しと云われている錫杖とお札と祠が祀られている。ここで勤行を行う のだろう。神聖な場所に手を合わせる。
今までの「靡」ではこの錫杖や祠を見つけることが出来なかったので初めての対面だ。静かな 雰囲気に溶け込んでしばらく静寂を楽しむ。
広場には丸太のベンチが設けられているので、これからの急な登り坂に備えて、昼食とする。先程 少し食べた弁当の残りを食べ、飲み干したお茶のペットボトルに水を移す。(12:20-12:40)

No69.二蔵宿の靡


緑の古道

百丁石

二蔵宿.. 内部→ 仏像→


初めて「靡」の雰囲気を満喫していよいよ大天井ケ岳の急な登り坂に挑む。ここからの坂道はきつい と先達の登山記録にも記されているので覚悟して臨む。
広場から大天井ケ岳と五番関の道が分かれるが、右に折れ大天井ケ岳への急坂を進む。少し登った 所から広場を見ると小屋が早くも小さく見える程の勾配だ。
始めはきつい勾配も淡々と登っていたが、段々と一歩の歩幅が小さくなり、息遣いが激しく、心臓が バクバクとなる。一休みする。再び登りだすが、2-3分でハーハーの状態で腰掛ける岩を探しては一息入れ 水を飲む。
今までの「熊野古道」紀行でも経験したことのない厳しい登り道だ。上りではなく登りだ。
登っては休み、登っては休みを繰り返し、やっと尾根道に出て一息付く。尾根道は快調に時間を取り戻 そうと歩む。再び、登り坂を進むとモノレールの線路が現れ、レール沿いの急坂を時々レールに腰掛けて休憩 しながら。時々林の切れ目からの展望に癒しを求めながら。
この辺りから風が冷たく感じられる位になり、汗は出るが心地良く、1300m位の高さを感じる。 急な坂を登り切ると視界の開けた広場に「祠」が祀られ、展望を眺めながら一息付く。(13:40)

急な坂道

モノレールの急坂

広場の祠


涼しい風と展望で一息付け、いよいよ大天井ケ岳への最後の登りにトライする。モノレール沿いに急坂には 大きなシダが荒地に生え、坂を登り、休憩をしてはまた登る。時々展望が開け眺めては新緑の小道を 登る。
カナカナセミと思われる音色に励まされて最後の坂を登り切ると頂上への分岐点の道しるべが立ち頂上(1439m)へ。
少し広場になった頂上は展望は十分ではない。リュックを降ろし、思わず座り込んで水を飲み、クッキーを 口に入れ一休みする。今日の行程での最高峰を踏破したのだ。(13:55-14:05)

モノレールと緑の古道

大天井ケ岳分岐点

大天井ケ岳頂上.. 標識→ 展望→



足はパンパになりつつあるが、気持は最高峰を踏破した満足感で下り坂に向かう。この下り坂が曲者で 足の疲れで踏ん張りが弱くなっている上に、木の根っ子の道が多く、根の上に足を乗せると見事に スリップする事態の連続だ。
坂も急でこの坂を登るのも大変だと思いながら、足元に注意しながら下ると尾根道になり、一息入れ ながらペースを戻す。
杉並木もあり大きな朽ちた株跡が残っている。緑の道、杉木立、根っ子の道を楽しみながら、苦しみ ながら、時々展望から下っているのを認識しながら下って行く。

木の根っ子の道

緑の下り道

杉木立の下り道


下り切った広場が「五番関」だ。正面に木製の門が見られる。あれが「女人結界門」と思いながら 広場を進むと一人腰をおろしておられる。挨拶をし少し話す。五番関下のトンネル西口に車を置いて 山上ケ岳を往復されたそうだ。すぐ横の降り口から車に戻られた。今日始めて会ったハイカーだ。
「五番関」の広場を見廻す。「女人結界門」の手前には「錫杖」が立てられ勤行するのであろうか。 掲示板には女人禁制について書かれている。
現在はこの「女人結界門」から山上ケ岳への女性登山は禁止されている。世界遺産登録時、色々と 問題になったが・・・。
「女人結界門」を入った所に祠が祀られ、内部には「役行者の像」が祀られている。
今回の紀行の最終地に到達したことに満足し、しばらく感慨に耽る。次回はここから山上ケ岳に 登るのだと思いながら。(14:50-15:05)

五番関・女人結界門


錫杖

女人結界門.. 案内板→

役行者の祠.. 役行者像→


今回の「大峯奥駈道」紀行の最終ポイントを踏破したので、ここからは一路バス停のある洞川まで進む のみだ。最終バスが17時55分なので2時間弱余裕があるが、地図案内では1時間40分程度かかるので 油断は出来ない。
五番関広場横から林道に下り始めるが、急な下り坂でロープを持って根っ子道を下る。次回はこの坂を 登らなければならないのだ。足場の良くない道を下り切ると林道に降りる。吉野から時々歩いた 林道と出会ったのだ。林道は五番関トンネルをくぐって合流したことになる。(15:20)

下り道

ロープの下り道

林道


ここから洞川まで1時間以上の林道歩行になる。下りなのと普段は舗装道路歩きは嫌いだが、今回は 足が疲れているので山道よりずっと楽だ。木立の間を縫って立派な林道が続くが、対向車も追い抜く車も 一台もすれ違わない。
レンゲ坂から山上ケ岳に向かう道路と合流し下って行くと大峰山への入口で役行者が母親と会ったと 云われる「母公堂」が立ち、参拝し一息入れる。
快調に下って行くと名水「ごろごろ水」が湧き出しているが、水量は少ないようで、少し下に大きな 給水場があるが、水を汲む人が行列しているのでパスする。
「行者の道」と名付けられた舗装道路を下ると段々街中におり、大峯祈願33回の碑がたくさん立ち、 この地で有名な胃腸薬・陀羅尼助を売っている薬屋(?)さんが多く店を構えている。
母が参ったこともあった「大峯蛇之倉七尾山」に参拝し、街の中心に向かう。店の方にバス停と公衆 温泉の場所を確認し、時間があるので洞川温泉センターに行き、温泉で汗を流す。予定より随分早く 到着した。(17:00)

母公堂.. 説明→

ごろごろ水.. 説明→

陀羅尼助の薬屋



ゆっくりと温泉で足腰をマッサージし、汗を流す。やはり歩行の後の温泉は最高だ。
バス停に行き最終バスの時刻を確認して、停留所前の食堂で生ビールと名物の冷奴・コンニャクのピリ辛で 今日の歩行達成を乾杯。美味い。
店の前がバス停なので発車間際まで座り、バスに乗る。乗客は小生一人だ。17時55分定刻に出発し、 運転手さんと話しながら、時々ウトウトしながら下市口まで。
近鉄で阿部野橋まで又もやウトウトしながら行き、天王寺駅で腹ごしらえをして22時前に帰宅する。

「大峯奥駈道」の歩行は素人には難しいと云われ、色々とサイトで調べ、修験者は中千本付近の宿坊から 一日で山上ケ岳の宿坊まで行かれるが、これを2回に分けて進もうと計画した。
スタートの金峯神社(700m)から四寸岩山(1235.8m)・大天井ケ岳(1438.7m)と2つのピークを越え、洞川温泉 (800m)と標高差740mは急できつかった。
今までも「ふくろはぎ」が張ることはあっても「太もも」がパンパンになることはなかった。やはり 急坂の登坂に慣れていないのがよく分かった。鍛えねば。

何はともあれ「女人結界門」のある「五番関」に到達し、次回はこの門から本丸の「山上ケ岳」に 登ろう。そして宿坊に宿泊し、修験者の息吹に触れた後、次のステップを無理のない計画ですすめようと。
充実感一杯の紀行だった。本日の歩行は35000歩だった。






    
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