○ 「吉野道 No3」見聞録 

1.奈良〜飛鳥
 2005.03.19 10:00〜17:00 晴れ

「青春18きっぷ」を利用して今週初め(3/14-15)に「大辺路」を踏破し、紀伊半島一周を実現出来た。 翌日は「伊勢路・本宮道」のスタートをきり、「伊勢路」踏破も視野に入る行程となった。
「吉野道」は前回「宇治十帖」を楽しみながら城陽まで到達し、次は「山背(やましろ)古道」で 木津近くまで歩く予定でいた。

「吉野道」のルートを検討している過程で飛鳥に大変詳しい「風人さん」 のサイトに巡り合い、BBSやメールで「吉野道」についていろいろとご教授いただいていた。
奈良から飛鳥へのルートは奈良時代には東から「上つ道」「中つ道」「下つ道」の南北に真っ直ぐな道が 整備され、山裾に「山の辺の道」があったそうだ。藤原道長は「中つ道」で飛鳥経由吉野に向かった とされているので、「中つ道」を歩こうと考えていた。

「風人さん」は古道探検と銘打って飛鳥に関連する古道を探検しておられ、今までに「下つ道」 「上つ道」を踏破されていた。今回「中つ道」探検を行うとの案内をいただいた。
今までの「熊野古道」紀行は連続したルートで歩行した。城陽〜奈良間を飛ばすことになるので 少し躊躇したが、歴史に詳しい方との紀行は小生の単に歩くだけのとは違った紀行になるだろうと 参加させていただくことにした。

近鉄・新大宮駅着9:48の快速急行で待ち合わせのため、8時過ぎに家を出る。大阪・鶴橋で乗換え 久し振りに近鉄に乗る。西大寺からの広い平城京跡を見ながら新大宮に到着。

歩行実行に当たり「風人さん」のHPにある「古道地図」(左図参照)を参考にイメージを膨らましていた。 上・中・下の古道が南北に真っ直ぐ伸びているのだ。「中つ道」の道幅は25mもある広い道だそうで、 当時としては驚くべき広さだろう。

「風人さん」「ももさん」と初めてお会いする。サイトからもう少し年配の方かと考えていたがお若い のでびっくりする。挨拶を交わし飛鳥大好きのお二人と「中つ道」歩行をスタートする。

◎「風人さん」のHP「飛鳥三昧」

◎「ももさん」のHP「ひとしひとひら」

事前にメールでいただいた9ページに渡る詳細な地図をプリントアウトして持参する。旧「中つ道」は真っ直ぐに 北から南に連なっているが、現在の道は衰退したり拡幅したりでその姿を残していない。地図には 旧「中つ道」が太く網掛けで示され、それに忠実に進むべく現在の道路をプロットされている。
細かく調査された道を進むことになるのだが、本当にご苦労に頭が下がる。
およそ26-7kmの旧「中つ道」踏破に向け、春うららの最高の天気の下、スタート!!

新大宮駅を10時に出発しR308に出る。休日で交通量の少ない国道を東に進み、国道がJR高架になる 手前から南に右折する。ここから真っ直ぐに南下することになる。
奈良駅の裏側(?)はきれいに整備されている。反対側の奈良町へは時々行くがこちら側は初めてで、 「なら100年会館」の風変わりな建物を過ぎ、JRの線路拡幅工事中の踏切を渡りR764を進む。

JR奈良駅

なら100年会館

奈良駅方面


出来るだけ忠実に旧「中つ道」を歩こうとするが、古道上に道がない時は近くの道を歩くことになる。 R764も少し東に寄っており、大安寺交差点で西側の道に軌道修正し、団地の中を歩く。川があるため 行止りになったので元の県道に戻る。県道の橋を渡り再び西側に戻ると民家が少なくなり生駒山が 展望出来る。

旧「中つ道」の真ん中を進む道脇に大きな池が現れ、奈良の東側の山並みが望まれのどかな雰囲気に なって来る。池に沿って景色を楽しみながら南下する。行止りになり東に迂回し県道を 歩く。県道は道なりに旧「中つ道」を横切り上三橋交差点に至る。この交差点脇に大きな 「道しるべ」が立っている。「右.高野山、左.なら道」と刻まれ古道であることを認識する。(11:05)

生駒山展望

潅漑用池

道しるべ


県道は南西に進むので、旧「中つ道」の少し西側の真っ直ぐな道をひたすら南下する。田園風景が 広がり、青空と山並みが美しい春の歩行を満喫する。道脇には「地蔵堂」や「大峯山三十三回参拝 記念碑」が立ち、吉野詣が盛んだったことが分かる。
気持ち良く本当に真っ直ぐな道を南下する。南下と云う言葉がぴったりの見通しの良い道だ。 小さな川の木の下に「地蔵堂」が祀られている。(11:35)

大峯山参拝記念碑・地蔵堂

真っ直ぐな道

地蔵堂


旧「中つ道」の少し西側の道を南下すると「西名阪道」の高架に当たり、くぐった左側に初めての史跡 「在原業平姿見の井戸」が立つ。井戸には文字が刻まれており、覗くと底に姿が映る。謡曲「井筒」 にも語られ、横には与謝蕪村の句「虫鳴くや河内通いの小提灯」が刻まれている。
井戸の前には「地蔵寺」が立ち、南下する道端に再び「大峯三十三回参拝記念碑」が立っている。 「大峯参り」が奈良地方では頻繁に行われていたことが分かる。
近鉄天理線「前裁(せんざい)駅」横の踏切を越えると病院があり、近くに食堂があるので昼食にする。 お好み焼き屋さんに入るが混んでいて時間がかかる。その間に「風人さん」にこれからの道筋、木津 から奈良へのルートについて教えていただく。お好み焼きを食べ出発する。(13:00)

在原業平姿見の井戸

刻印された井戸 説明→

大峯三十三回参拝記念碑



午前中の歩行で持参した地図の4/9を制覇したがまだ距離はある。今までは史跡も少なかったが これからはいろいろと期待出来そうだ。
真っ直ぐな道を南下し続けると道脇に可愛い「お地蔵様」が祀られ、穏やかな田園風景の道を進む。 珍しい「火の見櫓」も立つ田舎道を快調に進む。

お地蔵様

真っ直ぐな道

火の見櫓


道は少しづつ東に進み、丁度旧「中つ道」に交わる辺りに「山辺御懸座神社」が鎮座する。 「地蔵堂」には重要文化財の「十一面観音立像」が祀られ、この地に「藤原道長」が宿泊したとか。 落着いた境内で一息入れる。
旧「中つ道」の真ん中を進むと「三輪山」が遠く望まれ、春の田園風景を見ながら軽快に。

山辺御懸座神社・本殿 説明→

山辺御懸座神社・地蔵堂 説明→

三輪山展望


ひたすら南下すると大きな木の下に「宝供篋印塔」が祀られ、小さい布留川を渡り長柄運動公園を 東に見る所に「天皇神社」が立つ。朱色の本殿は色鮮やかで風格を感じさせる。本殿は重要文化財 とのことで、小さな杜の中の落ち着いた神社だ。(13:40)

宝供篋印塔

天皇神社・本殿 説明→

天皇神社・鳥居


やがて「大きな溜池」越しに山並みを望み、池の横には古風な「常夜灯」が少し膨らみかけた桜並木 の下に立っている。お花見にはなかなかの場所だろう。
気持ち良く南下を続けると少し大きな川の堤を歩く。大和川の上流とのことで驚く。珍しい 屋根吹きのお寺を眺め、橋を渡った所の「道しるべ」に「中ツ道」の表示がある。「中つ道」の 表示を初めて見たので嬉しい。

常夜灯

大きな溜池

道しるべ


川沿いの「地蔵堂」の横からこんもりした森になっている「村屋坐(むらやにいます) 弥冨都比売(ふみつひめ)神社」に入る。壬申の乱(673)の頃からの落着いた静かな境内には朱色の 本殿が鎮座し、重厚な感じがする。境内の「市杵嶋姫(いちきしまひめ)神社」の鳥居は朽ちて 落ちるような状態で奥には「物部(もののべ)神社」が祀られているのには驚く。
暑くなったのでシャツを一枚脱ぎ、一息入れる。(14:30)

村屋神社・本殿 説明→

市杵嶋姫神社

村屋神社・鳥居 説明→



「村屋神社」を出て野道を南下する。小川があり迂回しなくてはならないかと思ったが小さな橋を 渡り野良道を進むと遊んでいた子供が「こんにちは」と挨拶してくれる。「どこから来たと思う」 「東京・・・」奈良から歩いていると云っても感動はなくアホかと思っているのだろう。
旧「中つ道」から少し西に折れ「竹田神社」に向かう。
道脇に紅梅が咲き、こじんまりした神社が鎮座し境内には歌碑が立っている。(15:10)

野中の道

竹田神社

歌碑 説明→


旧「中つ道」の西を飛鳥に向かって南下する。正面に山が見え始めたので近付いて来たのだ。西側には 二上山の二つの頂が見えるようになって来た。
近鉄大阪線の耳成駅が近付き住宅街に入る。線路脇を東に折れ、旧「中つ道」に戻り踏切を渡る。 すぐ「市杵島神社」が静かに鎮座している。「市杵島神社」は方々にあるようだ。
由来書によるとここは藤原京の北東隅の鬼門で創建されたとか。いよいよ飛鳥に着いたことが認識 出来る。

飛鳥を望む道

二上山展望

市杵島神社 説明→


小さな溝に沿って南下すると「三輪神社」の横手に辺り、旧道の「中つ道」と「横大路」交差点に 地蔵堂が祀られ、その下の溝に大きな石「礎石」が置かれている。藤原京内の寺院の石か遺跡の 遺構か・・・。
ここが旧道の交差点と知りしばし交差点で古を偲ぶ。左に曲がり「三輪神社」に参拝する。境内には 空洞になっている大きな楠(?)が祀られているが、元気に枝を伸ばしている。(15:45)

三輪神社の礎石 説明→

三輪神社

空洞の木


旧家が残る「横大路」を東に進む。「中つ道」「横大路」と旧街道を続けて歩けるのはラッキーだ。 道に常夜灯のような「太神宮」の石塔を見て「横大路」を右折して南下する。JRの踏切を渡り進むと 右側にホームセンター・コーナンが見える。コーナンを建築する時に旧「中つ道」の全貌が広範囲に発掘されたそうだ。
「地蔵堂」が立つ道を進むと落着いた旧家が建ち並び、聖徳太子の妃が建てたと云われる「膳夫寺 (かしわててら)」に至る。境内には古寺の礎石も残っている由緒あるお寺だ。奥には「三柱神社」が 立つ。(16:00)

横大路

太神宮の石塔

膳夫寺 説明→


西に向かい旧「中つ道」に沿って再び南下すると材木屋街に出る。この辺りは吉野の山からの製材の 集荷所として材木屋が集まっているそうだ。
南下する道は真っ直ぐに「香具山」に通じており、遠くに「耳成山」「畝傍山」の「大和三山」が 望まれ飛鳥の真ん中に来た感が深くなる。少し日が傾き夕暮れ近い田園風景を堪能しながら香久山 への坂道を進む。

香具山に向かう中の道

耳成山

畝傍山


香具山をゆっくりと上る。野道ばかりだったので山道になり木立が嬉しい。古道を歩く感じがする。 中腹に「天香山神社」が鎮座する。静かな山中の神社で岩がご神体とか。境内には「天の真名泉」の 洞窟的な跡やこの木の皮で亀甲占いをした「波波迦(ははか)の木」が見られる。「柿本人麻呂の 歌碑」が立ち、奈良とは違った歴史を感じる神社だ。

天香山神社

天の真名泉

柿本人麻呂の歌碑 説明→


香具山の中腹の道を進むと見晴しの良い「国見の丘」に至る。夕暮れが迫る飛鳥の地を静かに 見下ろす。旧「中つ道」を歩いていた距離感から見ると飛鳥は狭く感じる。発展の限界を感じて 平城京移ったのか・・・。(16:30)
見晴し台の横には「舒明天皇の歌碑」が夕日に輝いている。道なりに坂を下ると「天岩戸神社」が 竹林の中に鎮座し、本殿の裏側に「天岩戸」の岩が見られる。
「天岩戸」も伊勢・日向等々方々に建てられているのだ。

国見の丘展望

舒明天皇の歌碑 説明→

天岩戸神社 天岩戸→


香具山を下り、旧「中つ道」の真ん中の野道を南下する。橿原市から明日香村に入ると電柱が なくなり、その対比が行政の姿を表わしているのか。
広々とした真っ直ぐな野道の脇に「大官大寺跡」の石碑が長い影を伸ばして立っている。 歴史が埋まっている田園なのだ。

電柱のある野道

電柱のない野道

大官大寺跡 説明→


真っ直ぐな道を進むと「石神遺跡」がある。歴史の宝庫なのだろうが、小生には目新しいこと ばかりだ。
「石神遺跡」のすぐ側に「飛鳥水落遺跡」がある。「時の記念日」は天智天皇が砂時計で時を告げた日と 記憶していたが、水時計だと間違いに気付いた。大掛かりな仕掛けをこの時代に考え、実践したのに 驚いた。日本書紀にこの水時計のことが書かれていて、発掘でそれが実証されたとのことだ。
本日の最終目的地である「飛鳥寺」に向かう。「ももさん」の歩行スピードがアップする。
「風人さん」が電話でお仲間と話しておられ、角を曲がった所で手を振ってのお出迎えを受ける。 「飛鳥寺」の前の「飛鳥庵」のおばあさんと「泉太郎さん」のお迎えを受け、「飛鳥庵」に入ると 5時のお寺の鐘がゴォ〜ンと響いた。(17:00)

石神遺跡 説明→

飛鳥水落遺跡 説明→

飛鳥寺


お二人にご挨拶してビールで「中つ道」踏破を祝って乾杯する。美味い!!
「泉太郎さん」は飛鳥の写真を撮っておられ、夕焼け撮影にお出かけになる。「飛鳥庵」のおばあさんは 元気でHP公開の反応を喜んでおられた。

◎「泉太郎さん」のHP「泉太郎の気ままな旅跡」

◎「飛鳥庵」のHP「飛鳥の庵」

夕日がまぶしく感じる「飛鳥庵」を後に食事に行く。新中華レストラン「花林」のマスター「yosioさん」も 「風人さん」の仲間でいつもオフ会の会場となる場所だそうだ。同じ仲間の「TOMさん」ご夫妻が先客として おられ、ご一緒させていただき、乾杯!!
飛鳥を愛する方々が三々五々集まる素敵な場所だ。美味しい料理と日本酒で話が弾む。史跡発掘の 現地説明会の話等、小生には難しい話も皆さんの熱心な会話に自然と引き込まれてしまう。

◎「yosioさん」のHP「新中華レストラン『花林』」

料理、お酒、お話に堪能してお開きにする。お店の車で近鉄八木駅まで送っていただき、「風人さん」 とは別れ「ももさん・TOMさんご夫妻」と車中で賑やかに話しながら、鶴橋・大阪経由で帰宅する。 今日の歩行は38000歩だった。


今回の「吉野道」紀行は順番を先に飛ばし、飛鳥大好き人間の「風人さん・ももさん」の古道探検に 同行させていただいた。いつも一人で黙々と歩くのとは違い、歴史や自然の説明をしていただき ながらの歩行はピッチも快調で教養も一杯詰まった楽しい紀行だった。
「風人さん」の人柄から集まったお仲間ともたくさんお会い出来た。皆さん飛鳥の歴史・自然・写真・ 散策・万葉集好きの集まりで楽しませていただいた。感謝・感謝!!
機会を作って又皆さんにお会いしたいものだ。「風人さん」ありがとうございました。

歴史的な事柄については、 「風人さん」のHP「飛鳥三昧」 を参考にして下さい。

次は飛ばした城陽から「山背(やましろ)古道」を歩いて奈良に向かう予定だ。 「吉野道」第3回の歩行が楽しく無事出来たことに感謝。








    
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送