[五番関〜山上ケ岳」[山上ケ岳〜和佐又]


○ 「大峯奥駈道No3」見聞録 

3-1.五番関〜山上ケ岳
 2006.08.23 10:20〜16:30 晴れ

「大峯奥駈道」を「五番関・女人結界門」まで歩いて1ケ月以上となった。
先達の方から山上ケ岳への修験道は危険が伴うから単独行は避けるようにとのアドバイスをいただいていた。 「大峯奥駈道」を歩き始める時からMAPや登山家の紀行記、単独行で「大峯奥駈道」を歩かれた方の 紀行記を参考にプランを立てていた。
参考にしていたMAP の標準時間を 参考に1.3倍程度の余裕を持つように計画した。登山グループの方は乗用車利用で「五番関」〜和佐又までを 1日で歩いておられるので、一泊すれば可能と判断した。

前回の紀行以降、「青春18きっぷ」旅行や高校野球を楽しんでいた。そろそろ動かねば・・・と天気予報を 見ながら決断し、山上ケ岳の宿坊の予約を入れるとOKなので実行に移す。
予約OKとなった夕方に豊中市近辺に大雨が降り、浸水する家屋まで出る惨事だ。飛鳥・吉野も激しい 夕立との情報で、夕立は3日とも云われるので、少し心配だか決行することにする。

今回は洞川までバスで行き、前回歩いた林道を登って「五番関」に戻って「女人結界門」をくぐり 進むので、バスの時刻に合わせて少し遅く出発出来る。
朝食を食べ、6時30分頃出発する。大阪経由で天王寺へ。阿部野橋で弁当を買い、予定より1本早い急行で 下市口駅に向かう。電車の中でウトウトとし到着。30分程度バス待ち時間があり、今日の行程を再度トレースする。
駅前に登山届を入れる箱があるので、行程を示し届出をする。
9時15分発の洞川温泉行バスはカップルと男性1人の4人で出発する。前回帰りに乗った路線だが、一番前の 座席でルートを確認しながら揺られる。他の3人は「みたらい渓谷」散策なのか手前で下車し、1人で 10時20分到着。

バスを降りると少し涼しく感じる。さあ出発だ。
旅館街の緩い勾配を登って行く。道路には提灯がぶら下がり、大峯山のシーズンを祝っている。5/3の 「戸開き式」から9/23の「戸閉り式」まで、洞川に宿泊し山上に登る修験者が多いのだ。
看板が立ち、「高校総体・登山大会」と表示されている。この地域一体で総体が行われており、各宿に 宿泊の高校名が書かれている。登山の競技とは何をするのか・・・と思いながら進む。(後程・小さな 事件(?)に遭遇する)

近鉄・下市口駅

洞川・旅館街

高校総体・登山大会看板


旅館街を抜けると木立の林道に入る。湧き水が溢れている所でタオルを濡らして首に掛け、鉢巻をする。 そろそろ汗ばんで来たのだ。
「ごろごろ水」の採取所には大阪・神戸ナンバーの車も列をなし、ポリタンクに水を汲んでいる。少し登ると 「母公堂」の朱色の社殿が迎えてくれる。(10:55)
大峯大橋へ向かう分岐点を左に進み、勾配は段々きつくなって来る。青空と山々が近くなり、五番関 登山口東屋・トンネル入口に到着する。ここまで1.5時間かかった。(11:50)

母公堂 説明→

大峯大橋との分岐点

五番関登山口の東屋


さあ、この坂道を登れば「五番関・女人結界門」だ。「五番関」の標識から前回下ったガレキの道を 登り始める。水が少し流れる歩きにくい道を登るとロープが張ってあり、急坂をロープ伝いで登り切ると 広場に出て懐かしい「五番関・女人結界門」に再会する。(12:10)

五番関の標識

ロープの道

五番関・女人結界門


ここで昼食にする。誰も居ない空間に1人で座り弁当を食べる。時々吹いてくる風は涼しい。汗が引く ような穏やかな時間が流れる。
錫杖が立てられているので、背を比べるとはるかに高い。2m以上はある。修験者はここで勤行をし、 「女人結界門」をくぐって山上ケ岳に向かうのだろう。「女人結界門」をくぐったところに祠が祀られ 内部には「役行者」の像が祀られている。さあ、「女人結界門」をくぐって大峯の聖地に向かおう。(12:50)

五番関・女人結界門

錫杖

役行者の祠


広場の「道しるべ」では2つのルートが示されていたが、古道のルートを取る。祠の右側の道を登り始める。 すぐに昔の蛇腹坂と云われる急な坂になり、息を弾ませて登る。木漏れ日がキラキラと輝き、坂道はきついが 気分は良好だ。アップしては平坦になり、又アップする坂道が続く。木々の緑と根っ子を楽しみながら 登ると新道との合流地点に到達し、「道しるべ」で確認する。
しばらく進むと大きな鉄鍋が掛けられている「鍋冠行者堂」に到着する。由来の説明を写真に撮ったが フラッシュで反射し読めないが、
『役行者がここで火を吹く大蛇に襲われ、鍋を被って難を逃れたと云う。錫杖で打ちつけたところ、 大蛇がちりぢりに飛び散り、その腹があった所が「蛇腹」とか』
横に「百五十五丁石」が立っている。ここで一息入れる。(13:00)

急な古道・蛇腹坂

木漏れ日の道

鍋冠行者堂 説明→


鞍掛の岩場・下から

鞍掛の岩場・上から

道は険しくなり、雨が降ると川になるような窪んだ所、倒木が遮る所、尾根の緩やかな所と変化に 富んでいて気分転換には良いが汗は・・・・。

「今宿茶屋跡」があるので、注意して歩いていたが、少し広い場所はあるも痕跡は見つけられなかった。

時々、展望を楽しみながら進むと崖沿いの道になり、滑落に注意しながら進む。

前方を高い岩場が遮る。「鞍掛の岩場」だ。初めての本格的な鎖場の登場だ。10m以上あろう岩場に ロープが垂れ下がっている。所々に結び目が作られて滑るのを防いでいるが、濡れているので滑り易い。
慎重に足場を確認しながら登る。ロープは途中までで、又上からロープが垂れている。
初めての経験なので緊張しながら一歩一歩登る。滑ることもなく無事到達し、汗を拭う。
岩場の上から下を見ると結構きつい岩場だ。(13:40)

倒木のある窪んだ道

木漏れ日の尾根道

崖沿いの道


一気に高度を稼いだので見晴らしが良くなる。白い雲が青空を隠しつつあるが、山並みがくっきりと 見える。大分登ったのを実感する。
再び緑の山道や木の梯子を登り降りしながら進むと「大峯大橋・女人結界門」からの道と合流し、 不動明王像に迎えられる。ここが「No68靡・浄心門(洞辻茶屋)」に到着した。(14:10)

鞍掛の岩場からの展望

緑の登り道

No68靡・浄心門・不動明王像


不動明王像の正面には護摩場があり、勤行をする場所のようだ。正面に古道をまたがるように「洞辻 茶屋」が建っているが、お店は開いていない。ここの葛湯が美味しいと楽しみにしていたが残念だ。
外の祠には「役行者像」が温和な姿で祀られている。
無人の茶店に山上ケ岳から下りて来られた方が3人休んでおられ挨拶する。「まだきつい坂があるので 頑張れ」と励まされ下りて行かれた。
茶店の中で一息入れ、後の行程をトレースする。階段・鎖場・覗き場等々、本格的な修験者の修行場が続く のを確認し、気持を引き締める。
茶店を出た所にも不動明王像が祀られ、ここから大峯行場と再確認し出発する。(14:20)

No68靡・浄心門・護摩場

洞辻茶屋

役行者像


計画の基本にしているMAPの洞川〜洞辻茶屋の標準時間は4時間20分だが、実際は3時間50分と30分早く 着いている。標準時間の1.3倍で計画していたので、大幅な時間短縮だった。

洞辻茶屋を出て道が分かれるが左に進む。右は下り道用の新道のようだ。 山沿いの道を進む。展望も開け青空と山並みが美しい。道の両側には大峯参拝三十三度供養塔から百度 を越えるものまで立っている。大峯信仰の深さがよく分かる。
しばらく進むとやはり無人の「陀羅尼助茶屋」が建つ。内部の店は花屋さんのようで、参拝の花を売って いるのが多いのだろうか。
陀羅尼助茶屋を抜けると道が2つに分かれる。左は行場に向かい、右は木の階段で鐘掛岩に通じると。 行場はとても無理と判断し、右の木の階段を登る。
所々朽ちて階段がなくなっているが、急な山道を登るよりは楽だ。しかし、階段の連続で時々座って 休まないと息が切れる。修験の道に向かっているのが段々と実感できる。

陀羅尼助茶屋

行場への分岐点

木の階段


淡々と長い木の階段を登る。地道より登り易いとは云えこう長いと足がきつくなる。時々、展望を 楽しみながら進むが、速度は落ちて来る。

油こぼし岩場・下から

油こぼし岩場・上から

前に大きな岩場が現れる。標識がないが「油こぼし」の岩場と思われる。
見上げても頂上が見えない高さでロープでなく鉄の鎖が垂れ下がっている。ロープと違って鎖をは重い。
足場を確認して第一歩を踏み出す。鎖を持ち、足場を確認して慎重に登って行く。結構厳しい。 スピードは遅いのに息使いは荒くなる。

雨が降り、岩場が濡れている場合はとても登る技術・度胸はないだろうと思いながらゆっくりと進む。 どうにか頂上に到達する。疲れがどっと出た感じだ。

一息入れて登り始める。「鐘掛岩」の碑が立ち、横を見ると先程より高い鎖場が下にある。これが 「小鐘掛岩」の修行場のようだ。これはとても登れなかった。
見上げるとこれも高い岩場があり、鎖が垂れ下がっている。あれが「鐘掛岩の鎖行場」のようだ。直角に そびえる鐘掛岩を登るのだ。とても無理。
横には山伏姿の像が祀られている。(15:00)

鐘掛岩の碑

鐘掛岩の鎖行場

山伏姿の像


修験者はこの鎖行場を登るが、とても無理なので横の長い木の階段を登る。
登り切った広場に「役行者」の像が祀られている。その上の岩場に登る道があるので、両手を使って よじ登る。ここが「鐘掛岩の鎖行場」の頂上だ。下を見下ろすと先程の山伏姿の像が小さく見られる。 この高度を一気に鎖で登る修行なのだ。改めてとても無理と痛感する。
ここからの展望では山々が少し低く見えるようだ。少し黒い雲が出て来た。夕立が心配だ。

長い木の階段

役行者の像

鐘掛岩の鎖行場の頂上


再び木の階段を上り始めるが、朽ちた所が多く、横の地道に移り登ることにする。並行する木の階段に 木の門があるが、そちらに行けないので通り過ぎ、合流地点から戻る。

「等覚門」だ。吉野から山上ケ岳の間には修行者四門があり、第一門の「発心門」は金峯山寺の参道 にある「銅の鳥居」で、第二門の「修行門」は金峯山寺鳥居でこの「等覚門」は第三門に当たる。
門には「役行者」が祀られている。少し手前に「お亀石」があったようだが、見落としたか木の階段を 避けた結果か出会えなかった。
少し進むと今日泊る宿坊の屋根が見えて来た。もう少しと疲れた足にムチを入れる。

等覚門

役行者の祠 ..役行者像→

宿坊の屋根


坂道を登っていると「西の覗き」の標識がある。岩場を登ると石碑がたくさん立ち、その向こうは 崖になっている。有名な修行場「西の覗き」だ。
ロープを体に結わえて半身を崖から突き出して、先達の問いかけに応える怖い体験をする。無人で 残念ながら(?)経験出来ない。崖を覗くが怖くて前に進めない。一応写真をパチリ。
ここは谷の向こうに見える崖と同じようになっているのだろう。凄い高さだ。黒い雲が濃くなって 来た。(15:25)

西の覗き

西の覗きから覗く

対岸の崖


足に結構身が入って来た。空模様も暗くなって夕立の恐れもあるので、取りあえず宿坊に行くこと にする。
山上に進む途中に宿坊が集まっている。「東南院」はすぐ分かり声をかける。坊さんが出て来られ 挨拶し、お茶をいただく。熱いお茶が美味しい。(15:40)
「熊野古道」のこと、「大峯山」のこと等々色々と話す。もう山頂の「大峯山寺」は閉まっているが 頂上を極めておこうと思い、リュックを置いて出発する。

少し休んで歩き始めると足が非常に重い。修行者四門の最終門「妙覚門」に迎えられ、くぐると 「大峯山寺」だ。
もう閉まっているので、上のお花畑から展望を楽しむ。花は咲いていないが、笹が手入れされており 美しい。風は冷たく半袖では少し寒い。山の名前は分からないが黒い雲の間に山並みが続く。
山上ケ岳の最高峰に向かう。山頂には役行者の求めに応じて金剛蔵王権現が出現したと云われる 「湧出岩」が白く盛り上がっている。ここが山頂(1719.2m)だ。

妙覚門

お花畑から展望

湧出岩


大峯山寺に戻る。明日の行程を確認する。境内に護摩場があり、ここで勤行を行うので あろう。横に大きな「錫杖と鉄の下駄」が置いてある。何かのいわれがあるのであろう。
柏木への道しるべがあり、明日はこの道を下れば良いことが分かったので一安心。

山上ケ岳・三角点

No67靡・山上ケ岳護摩場

錫杖と鉄の下駄


明日の下山道を確認したので、宿坊に戻ろうとするとその道から1人登って来られた。「遭難者に 遇ったので、警察に電話しなければ・・・」と。高校総体が行われている付近で引率の先生が道に 迷い、徘徊している所に遭遇し、山上へ行こうと薦めたが、大普賢岳の方に向かうと云って別れたと。
東南院に泊まるとのことで、後程お会いしましょうと先に進まれる。高校総体の登山大会で遭難が あるとは・・・・。

宿坊に戻ると先程の方が警察や関係者に電話連絡で忙しそうだ。宿坊のお手伝いの方だった。
リュックを部屋に運ぶ。今日は小生1人の宿泊だそうだ。8畳に板の間がある大きな部屋に布団と毛布・丹前が 置いてある。毛布が必要なのかと思う。
風呂が沸いたとのことで風呂に入る。お湯がたっぷりと満たされ、山の上とは思えない位だが、熱くて 湯船に入れない。水を入れようと考えたが、溢れさせるのももったいないので掛け湯をして上がる。
食事は18時からとのことで、外に出るが霧が出て来て寒い。部屋に戻り長袖のシャツを取り出し羽織る。
夕食は精進料理で質素なものだ。ビール・500円と入口に書かれていたが、修験道の本山に泊っているので、 一念発起して禁酒とする。数年振りの休肝日だ。高野豆腐・煮しめ昆布・レンコン・椎茸・干瓢・ 煮豆・漬物・味噌汁をゆっくりといただく。

宿坊の部屋

霧の中の宿坊

精進料理の夕食


洞辻茶屋から山上ケ岳までの標準時間は1時間であるが、実際は1.5時間と1.5倍かかった。やはり 体力的に後半の疲れが顕著なのが分かる。
全体では前半の貯金でほぼ標準時間で到達出来たのは是としたい。今日の歩行は22000歩だった。

遭難者はまだ見つからないようだ。警察との電話は携帯も、通じないので衛星電話で話している。 この事件(?)が報道されると家で心配してはいけないと思って衛星電話で無事到着したことを知らせる。 少し話しただけで200円の通話料と高いものだ。
部屋に戻るがテレビも何もなく本を読んだり、明日の行程をトレースしたりするしかなく20時頃には眠って しまう。

「女人結界門」から大峯信仰の聖地を登り、頂上まで到達した。修験者は勤行をしながら、通らなかった 鎖場を登り修行されるのだ。
その一端を経験出来たことに満足し、明日の行程の安全を願おう。


[五番関〜山上ケ岳」[山上ケ岳〜和佐又]




(工事中)




    
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送